プロンプトとは?
プロンプトとは、生成AI(例:ChatGPT)に与える指示や質問のことです。プロンプトを通じて、AIに何をしてほしいかを伝えます。適切なプロンプトを作成することで、AIから役立つ応答を得ることができます。逆に言うと、不適切なプロンプトを使用すると求めていないものや、精度が低い回答が出力される原因にもなります。
図にもあるように生成AIの使い方としては、プロンプトを作成し、生成AIに入力します。そしてそのプロンプトを生成AIが処理した後に、回答を生成するという流れになっています。
AIは人間のように全てを自発的に理解するわけではありません。したがって、明確で効果的なプロンプトを作成することでAIとのコミュニケーションを円滑に行うことができるのです。
生成AIは時に、実際には存在しない情報や誤った情報を生成してしまう場合があり、それをあたかも真実であるかのように語ってしまう場合があります。これを「ハルシネーション」といい、ChatGPTなどの生成AIが抱える一つの課題でもあります。
効果的なプロンプトを作成する方法
効果的なプロンプトを作成するためには、いくつかのポイントがあります。これらを意識することで、AIからより正確かつ有益な応答を得ることができます。
ここではプロンプトを作成するうえで押さえるべき3つのポイントをご紹介します。
具体的な指示を書こう
生成AIに具体性のないプロンプトを入れてしまうと、具体性のない答えが返ってきてしまいます。
特に、要約や翻訳などのタスクを生成AIに依頼する場合は、「指示」と「コンテキスト」を明確に分けられていることが理想です。後に詳しく説明しますが、その際には、「#」のような区切りを表す記号を使うと良いでしょう。
以下のリストを箇条書きで整理してください。
#リスト
りんご、バナナ、オレンジ、ぶどう
プロンプトは具体的に書くことが重要とお伝えしましたが、質の高い回答を得るためには、求めているコンテキスト、結果、長さ、形式、出力のスタイルなどの項目を詳細にプロンプトに含めることが重要です。また、5W1H (いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように) を意識することで漏れなく指示を与えることができます。
曖昧なプロンプトでも回答を得ることは可能ですが、生成AI側が間違った推測をもとに回答を生成する可能性もあるので注意が必要です。
その他にも、求める回答の文字数、段落や、箇条書きなどの回答形式を指示することも可能です。
簡潔で要約された回答を求める場合は、文量や文字数を少なくするように指示をすると、そのような回答を得ることができます。
このような生成AIへの指示は、#などの記号を使ってタスクを分け、詳細に要件を書くことで効果的にプロンプトを作ることができます。
例えば、#命令 、#内容 、#条件といったような構成にすることで、生成AIがタスクの内容を理解しやすくなり、こちらが望んでいる回答を得られやすくなります。
なお、項目名を意味する#(項目名)は自由に設定をすることができますので、様々な条件や注意点、内容に応じて設定してみましょう。
例えば、以下のようなプロンプトは具体的で分かりやすいです。
#命令文
以下の内容に基づいて、ブログ記事のアイデアを考えてください。
#内容
Webデザインの配色の基本について、初心者向けの記事を書きたいと思います。
読者は、デザインの基本知識がまだない、またはこれから学び始めたばかりの方です。具体的には、配色の基本ルールや使いやすい色の組み合わせ、初心者が避けたい配色ミスなどを解説したいと考えています。
#条件
読者がすぐに実践できる配色テクニックや例を盛り込んだ内容にしてください。
初心者向けの親しみやすいブログ記事のタイトルを2つ提案してください。
各タイトルごとに記事の構成を3~4項目のアジェンダとしてまとめてください。
(各アジェンダは50文字以内で)
上記のプロンプトのように、「#命令、#内容、#条件」などの記号を使って項目を分けたり、「アイデアを2つ提案してください。」といったように、具体的な指示をすることによって次のような具体性のあるブログのタイトルとアジェンダのアイデアを得ることができました。
出力結果
なお、次のようにプロンプトを作成する際に頻繁に使われる記号は、基本的には#(ハッシュ) と、 – (ハイフン)なので、この2種類はぜひ使えるようにしておきましょう。
記号 | 使い方の例 |
---|---|
# (ハッシュ) | プロンプトを項目に分けたい場合に使用します。 |
– (ハイフン) | 単語や文章を箇条書きで示す場合に使用します。 |
変数を用いてみよう(応用編)
ワンランク上のテクニックとして、プログラミング言語で変数を扱う場合に良く使用される{ }を使うことで、変数参照を行うことができます。例えば、「#で示した項目の指示内容全体を示す」場合は、{#入力}、{#出力形式}とすることで、#入力、#出力形式の全体を指すことができます。
ChatGPTを含めた生成AIはプログラミング言語も学習しているため、{ }を変数として扱うことができます。
#命令
{#入力}の学習目標を達成するための学習プランを{#条件}を参考に作成してください。
また、出力は{#出力形式}に従うようにしてください。
#入力
-英検2級合格
-TOEIC600点突破
#条件
-英語はまだ基礎レベルであり、中学校の文法から始めることを前提とする
-英語のスクールに通うことは考えておらず、独学で行う
#出力形式
-1か月、1週間、そして1日ごとの学習スケジュールを表形式で立てる
出力結果
このように、{ }で変数として指定することで生成AIに分かりやすく指示内容を伝えることができるので、より精度の高い回答を得ることができます。
役割を与えてみよう
生成AIには特定の役割を与えることによって、その役割に沿った応答を生成させることができます。
これはロールプレイプロンプトとも言われ、役割を与えなかった場合に比べてその分野の専門的な視点から生成させることができるので、精度を高めることができます。
例えば、マーケティング部署に所属している方であれば、生成AIにマーケティング戦略について尋ねる場合は「マーケティングの専門家になってください。」と予め役割を与えてあげることで、専門家の視点で回答を得ることができます。
あるいは、BtoCの営業担当であれば、自分が「営業役」で生成AIに「顧客役」となってもらうことで、商談を想定したロールプレイングを行うこともできます。
このように様々なシチュエーションに合わせて役割を割り当てることで、専門家の視点からの意見を聞いたり、ディスカッション相手や練習台となってもらうことができます。
#命令
マーケティングの専門家として、以下の要件に従ってSNSを活用したプロモーション戦略を作ってください。
#商品情報
– ターゲットは10代、20代のZ世代の女性とする。
– 商品は今年の冬に発売を予定している新たなスキンケア商品とする。
– インスタグラムやtiktokを使ったプロモーションを重点的に行うことを目的とする。
#条件
– Z世代に対してSNSを活用したプロモーション戦略が有効であることを説明してください。
– それぞれのプロモーション戦略はマーケティング担当でなくても理解しやすいようにすることを心がけてください。
#出力形式
– 戦略は3つ考えてください。
– それぞれのプロモーション戦略について、箇条書きで詳細な説明を加えてください。
– 文字数はそれぞれ100字程度とし、それ以上は超えないようにしてください。
– 重要な箇所には「」を付けて強調してください。
出力結果
このように与えたい役割に応じて、生成AIがその視点に立った回答をします。
より専門的に議論やアイデアをブラッシュアップしていきたい場合にぜひ活用してみてください。
事前に参考情報を与えてみよう
プロンプトの中に出力するための例や、推論ステップ、そして事前情報を加えておくことによって、回答の精度を高めることができます。事前に情報を与える方法として2つご紹介したいと思います。
① Few-shotプロンプティング
Few-shotプロンプティングとは、生成AIに例を提示することによってタスクの実行をさせるための方法を学習させることを言います。
特にタスクが複雑な場合は例を提示しないZero-shotプロンプトだと不十分である場合があります。そのため、生成するためのヒントとなる例(Few-shot)を与えることでより精度を上げることができます。
次の例は製品のレビューが「ポジティブ」か「ネガティブ」かの判定の例を最初に示し、
その後に新たなレビューの判定を行わせるFew-shotプロンプティングの例です。
以下は製品のレビューです。
それぞれのレビューがポジティブかネガティブかを判定してください。例をいくつか示します。
例1: レビュー: “このスキンケアクリームはとても効果的で、肌がすごく柔らかくなりました!”
判定: ポジティブ
例2: レビュー: “使ってみましたが、全然効果がありませんでした。お金の無駄です。”
判定: ネガティブ
例3: レビュー: “この商品、買って大正解!肌の調子がすごく良くなった。”
判定: ポジティブ
次のレビューの判定をお願いします。
レビュー: “匂いがきつくて、あまり好きではありません。肌もあまり変わらなかった。”
判定:
出力結果
例1、例2、そして例3で判定方法の例を提示し、新たなレビューの判定を行わせた結果、正しく「ネガティブ」と判定させることができました。
このように、Few-shotプロンプティングはAIに「何をすべきか」の例を与え、それを参考情報として新たなタスクを実行させることができます。
② Chain-of-Thought プロンプティング
Chain-of-Thoughtプロンプティングは生成AIにプロンプトを入力する際に、思考の過程や具体的な手順を予め与えることで、質問内容に適した回答を得られるようにする方法のことです。
元々は2022年にGoogleの論文で発表された手法で、特に推論タスクにおいてAIの言語モデルの能力を向上させることが報告されています。
では実際に、フィットネスジムのWeb広告分を考えるタスクをChain-of-Thoughtプロンプティングを使って行ってみたいと思います。
横浜にあるフィットネスジムのWeb広告を行うにあたり、広告文を考えてください。
24時間いつでも利用可能であることや価格が安いことをテーマに、3個考えてください。
#手順
1.広告文の目的を整理してください。
2.{1}の目的を達成するために必要な情報を網羅的に整理してください。
3.{2}の情報を元に、広告文を作成してください。
出力結果
#手順のところで、どのようにタスクを実行していくのかを事前情報として与えることによって、それに基づいたプロセスでフィットネスジムの広告文を作成することができました。
この方法を利用することで、単なる回答に終わるのではなく、思考プロセスを伴った回答を得られるので誤った結論に至るリスクを減少させることができます。
プロンプト作成方法のまとめ
ご紹介したプロンプト作成のポイント3つをまとめました。
こちらの基本をしっかりと押さえながら、文脈や状況に応じて適切なプロンプトを作れるように訓練をしていくことが大切です。
- ①具体的な指示を書こう
-
具体性のないプロンプトを入れてしまうことによる、具体性のない答えが返ってくることを防ぐために、詳細に書くようにしましょう。必要な要件は#などの記号を用いることで明確に分け、行ってほしいタスクを数字で表してあげると精度の高い回答を得ることができます。
- ②役割を与えてみよう
-
生成AIに特定の役割を与えることで、専門家の視点から精度の高い回答を得ることができます。
- ③事前に参考情報を与えてみよう
-
タスクの実行方法の例を参考方法として事前にプロンプトに提示することで、回答精度を上げるとともに、推論ステップやタスクの実行の流れを確認することができます。
プロンプト演習問題
これまでのプロンプト作成の基本を意識しながら、次の演習問題を活用してChatGPTのプロンプトを作成してみましょう。
あなたは、以下をコンセプトととした新商品の清涼飲料水のプロモーション戦略を、ChatGPTに提案させたいと考えています。
この商品はZ世代(10代〜20代の若者)をターゲットにしており、インスタグラムとTikTokの2つのSNSを活用したプロモーションをこれから行います。
今回学んだプロンプトのポイントを踏まえて、ChatGPTに適切なプロモーション戦略を提案させるためのプロンプト構造を意識しながら作成してください。
商品コンセプト:「様々な果実のフレーバーを楽しむことでリフレッシュでき、なおかつ低カロリーな新感覚の飲料水」
- #(ハッシュ)や-(ハイフン)などの記号、そして{}といった変数を必ず使うこと
- ChatGPTに役割を与える (「マーケティングの専門家」など)
- 商品コンセプトをプロンプトに含めること
- インスタグラムやTikTokなどのSNSを活用した具体的なプロモーションアイデアを3つ提案させること
- 各アイデアには、簡潔にまとめることを意識させ、50字以内とすること
この演習問題にトライした後は、#DXアップ #AI実践チャレンジ のハッシュタグでぜひ感想をポストいただけると嬉しいです!
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